とても興味深い考察をしている記事をネットで読みました。→日本社会の不安蔓延は「籍を置く」場所が失われたせいだ

この記事を書いた渡部氏によれば、多くの日本人が今「漠然とした不安」を抱えて苦しんでいるのは、バブル経済崩壊後、どこかに「籍を置く」ことで得られていた安心を得られなくなったからだ、と書いています。渡部氏が「籍」と捉えたのは文字通り「籍」を入れる「良い人との結婚」だけではありません。「良い大学に入って安心」「良い会社に入って安心」というようなことも指しています。

そして、渡部氏はかつて、こういった日本型の社会形態を「堤防型社会」と定義したそうです。堤防の内側にいることで「あるところに籍を置けば、とりあえずその後は安心できる」という人生。

実際にバブルが弾ける前の日本では、渡部氏が言うように全てこの「堤防の内側に入るため」に制度設計がなされていたように思います。受験競争、新卒一括採用、終身雇用、年功序列、手厚い福利厚生、等々。

ところが、バブル後は「堤防の内側」に入ったと思っていても、従来通り「安心」を提供するという機能を「堤防」は果たさなくなりました。それは、シャープ、東芝、三菱自動車といった、正に安心だと思えた「堤防」が決壊した事例をみても明らかだと思います。

私がこの記事と「堤防型社会」という言葉を読んで連想した物語があります。ここ数年で、特に若い世代を中心にブームとなっている「進撃の巨人」です。

「堤防」の正体と「進撃の巨人」

2年位前に深夜にTVをつけて偶然見たのが「進撃の巨人」のアニメでした。その強烈なビジュアル(巨人と人類の戦い)と独特の世界観、そして魅力的なキャラクター達にぐいぐいと惹きこまれて、その後はDVDを全巻借りして一気に見ました。(あまりに面白くて、最近また一気に2回目を観ました。)

それ以降は昨年開催された「進撃の巨人展」に、普段なら並ぶことが大嫌いなのに、2時間近くも並んで「特別展」までも見るという大ファンになりました。正に「ハマる」とはこのことです。最近の全てのコンテンツの中で一番「ハマった」と言っても過言ではないです。

念のため「【進撃の巨人】って名前は知っているけど何?」という人のために、簡単にストーリーの骨子を説明しておきます。

ある時、突然現れた巨人に人類は存亡の危機を迎えます。なぜ人類滅亡の危機かと言えば、巨人達は不死身に近い性質を持っているいる上に、唯一の行動目的が人類を喰い殺すということだからです。そこで、人類が考えた手段は自分達が住んでいる場所を限定して、その周りに何重にも張り巡らされた巨大な「壁」を築くというもの。アニメの舞台はその危機当初から100年以上経って、人類全体がすっかりその「壁の中」で安心した生活を送っているという所からスタートします。しかし、ある日、超大型巨人が突如「壁」の外に現れて、壁を破壊してしまいます

このように巨人vs人類というシンプルな構図を描いた物語なのですが、原作の漫画連載開始からジワジワと人気が出始めて、アニメ放送がブームに火をつけたようです。私もファンとして当然原作の漫画も読んでみたのですが、圧倒的な迫力と疾走感のあるアニメの方が魅力的だと思います。(はっきり言って、映画は最悪でした。)

ストーリーをもう少し進めて解説します。「壁」を壊して内側に入り込んだ巨人達は次々と人を襲い喰らい始めます。その犠牲者の一人が主人公(エレン・イェガー)の母親です。その母親が巨人に食い殺されるというショッキングなシーンをエレンは目の前で見てしまいます。その体験を経て、エレンは幼馴染の友人(ミカサとアルミン)と共に「調査兵団」という、人類の中で唯一「壁」の外で活動する部隊に所属して、母親の敵をとるべく巨人の殲滅を誓うのです。

壁この「進撃の巨人」で描かれる、人類に安心をもたらしてきた「壁」と、渡部氏が喝破した現代日本人の不安の原因である「堤防」の存在がとても似てると思いました。

「進撃の巨人」が大ヒットする理由

上記の記事を読んで、「進撃の巨人」がここまで大ヒットした大きな理由がわかった気がしました。

渡部氏が指摘した「もう堤防は決壊しているのだ。」という状況を薄々感じ取っている我々日本人(特に若者層)が、「壁」の外側で唯一巨人達と戦っている調査兵団に無意識のうちに感情移入しているのではないかと思ったのです。実は自分達も「壁」の外に飛び出したいけれども、様々な理由で一歩踏み出せないでいる、そんな悶々とした思いを「進撃の巨人」で描かれる主人公達が、ある意味”代理行動”を果たしてくれているのではないでしょうか。

「進撃の巨人」の主題歌で「紅蓮の弓矢」という曲があります。アニメのシリーズ前半で流れるこの曲にとても印象に残るフレーズがあります。「家畜の安寧」と「虚偽の繁栄」というフレーズ。エレン達はこの「安寧」と「繁栄」を良しとせず、自ら選んで「壁」の外に出向き、人類の活路を拓こうと奮闘しています。さすがに現在の日本の社会が「家畜の安寧」と「虚偽の繁栄」になっているとは思いませんが、皆どこかで近い将来、本当にそのような状態になるかもしれない、と感じている部分があるのは否定できないと思います。

さて、皆さんは「壁」の外へ出る勇気を持っていますか?

【大暑】7/23~8/7

時節が変わって「大暑」です。1年で最も暑さが厳しい頃で、夏のお祭りなども多く開催される時期です。

旬のモノ

  • トマト
  • 鰻~うなぎ
  • 小肌~こはだ
  • 枝豆~えだまめ
  • 苦瓜~にがうり
  • ピーマン
  • 胡瓜~きゅうり
  • 穴子~あなご

【いま最高に旬な食材を食べて、薬要らず・カゼ知らずのカラダに!】